これまで私たちは、空調家電を中心にものづくりをしてきました。大切だと思ってきたのは、性能や機能ではなく、気持ち良さや心地よさといった「良い体験」を提供すること。数値で測れるものより、測れないものの方が重要であることが多いと思います。

自分たちの考える「良い体験」をもっと感じていただける方法はないだろうか。私たちは考えてきました。そこで思い至ったのが「食べる」という五感すべてを使う行為です。おいしさは数値で測ることはできませんが、人はそれに喜びを感じ、時に感動さえします。

2015年のバルミューダのキーワードは「Hello Kitchen ! 」 私たちの新しい試みが始まります。

私たちのキッチン家電最初の製品はトースターになりました。私も毎朝トーストを食べています。そして、毎回思っていたのは、絶対にもっとおいしくなるはずだ、ということでした。なぜなら以前、忘れることのできない、感動のパンを食べたことがあったからです。

1991年、当時17歳だった私は高校を中退して、南ヨーロッパ地方に放浪の旅に出かけました。その初日、日本から数十時間かけてスペイン南部のロンダという街にたどり着きました。体は疲れ果て、そして空腹でした。ひとりぼっちで見知らぬスペインの田舎の街まで来てしまった。正直に言うと、とても寂しく、とても不安でした。

その時、街の小さなパン屋さんからとても良い香りがしてきたのです。私は喋れないスペイン語で焼きたてのパンを一つ分けてもらいました。そのパンを一口食べた瞬間、涙があふれ、涙と一緒に疲れや不安が洗い流されていくような気がしました。たった一つの田舎風の小さなパンに、食べ物の持つありがたさや力強さを感じた、忘れられない思い出です。

もし、毎朝のパンがとてもおいしく、朝食がとても楽しかったら。その日は少しだけ良い日になるに違いありません。そんな一つ一つの体験をより良いものにしていくのが、現代の道具である家電の役割なのだと私たちは考えています。バルミューダのトースターは、最高においしいパンを食べるという「良い体験」を提供するために作られました。

トースターは私たちの新しい試みの最初の一歩です。最高のアイディアを実現するため、テクノロジーを追求するのがバルミューダ。今後も続々と「良い体験」を提供していく予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。

平成27年5月吉日
バルミューダ株式会社 代表取締役社長

寺尾 玄