心のおもむくままにはじまる、
穏やかな朝。
二人の朝は、ごく自然とはじまる。示し合わせることなく目覚め、どちらからともなくクラシックやジャズのレコードをかける。そして朝食を作りはじめ、食卓へ。
「だいたい私は7時頃に起きて、猫の世話をしたり、掃除をしたりしています。夫は夫で起きてきて、コーヒーを淹れ始めて、パンを焼き始めて。特に決めているわけではありませんが、8時頃には揃って朝食をとりますね」(順子さん)
その朝食のメニューも、気分によってそれぞれが好きなものを選ぶ。仕事柄、1日中料理の現場に携わる二人だからこそ、家での食事はできるだけ無理をせず、手軽にできておいしいものをとるようにしている。
「お互いに自分の食べたいものを作りながら、『これ作るけど食べる?』と声をかけ合う感じ。僕は割と毎朝決まったものを食べるのが好きで、チーズトーストとコーヒーの組み合わせが定番です。順さんはよくフルーツやヨーグルト、野菜のポタージュスープを食べています。少しゆっくりできる日は、クロックムッシュを作ることもありますね。といっても難しいことをするわけではなく、時間があるときに作り置きしておいたベシャメルソースをパンに塗って、ハムやコンテチーズを挟んで焼くだけ。案外簡単なんです」(真さん)
チーズトーストを焼くときにも、クロックムッシュを焼くときにも、かねてよりバルミューダのトースターを愛用している二人。
「モードごとに最適な焼き上がりに向けて、焼き初めから仕上げまで細かな温度制御をしていると聞いて驚きました。僕はチーズトーストでも、230℃のクラシックモードに設定して様子を見ながら焼くこともあるんですが、庫内の温度を一定に保つようにコントロールしているからこそ、全体的にムラがなくきれいに焼き上がるんですね」(真さん)
さらに、仕上げ焼き専用「サラマンダー」機能を搭載したスチームトースター「BALMUDA The Toaster Pro」を使ってみて、調理の幅が広がったと真さんは話す。
「僕、焼き目にすごくうるさいんですよ(笑)。だからチーズトーストモードで焼いた後に、上火のみで焼き目が付けられるサラマンダー機能は重宝しています。ピンポイントに熱を当てられるので、フライパンで調理をしているのと同じように、目で見て感覚で調理し微調整をしやすくて。トーストだけでなく、フルーツのスパイスローストも簡単においしくできて、最近は朝食メニューのラインナップに加わりました」(真さん)
真さんが「ライフワークの一つとして追いかけている」と話すほど好きなのがコーヒー。当然、朝の一杯も欠かせない。もともとはハンドドリップでじっくり時間をかけて入れるのがルーティーンだったが、「BALMUDA The Brew」を手にしてからは少し変化があった。
「ハンドドリップはもちろんおいしいんですが、まずお湯を沸かして、コーヒー豆に少しずつお湯を落として……と一つひとつの作業に手間がかかる。15分くらいは付きっきりで作業をしないといけませんよね。でも、『BALMUDA The Brew』はハンドドリップのような味わいを保ちながら、2杯分が5分ほどでできるので重宝しています。淹れている時の音もどこか心地良いです」(真さん)
研究熱心な真さんには今、「BALMUDA The Brew」を使った密かな楽しみがある。
「ハンドドリップと違って、このコーヒーメーカーならば毎回ブレなく全く同じ抽出ができますよね。だから豆の種類や、煎り具合によってどんな味の違いになるのかが色々試したいなと。先日もお気に入りのコーヒー豆屋さんから3種類豆を買って、レギュラーモードで淹れて飲み比べてみました。今度はストロングモードでも淹れてみようかなと。研究するのが楽しいです」(真さん)
もう一つ、普段の食卓を豊かにする上で欠かせないのが器。器収集は二人の共通の趣味だ。
「日本の作家さんはもちろん、ヨーロッパの蚤の市やアンティークショップで買ったものまで、旅先で出会ったものを少しずつ買い揃えています。割れた器も金継ぎをして、できるだけ長く使えたらなと」(順子さん)
「朝の時間を気分良く過ごすことができると、一日のモチベーションも自然と高まるものです。お気に入りのお皿やカップで朝食をとると、爽やかに仕事に向かうことができます」(真さん)
二人が暮らすのは、木々に囲まれた閑静な一角に立つ世田谷のヴィンテージマンション。2022年の10月に引っ越してきた。中でもお気に入りは、食卓を彩る大きな窓。
「毎朝、寝室から出て食卓に入ると、外の景色が目に飛び込んできます。鳥のさえずりを聴いて、四季折々の装いの木々を眺めながら朝食を食べる時間は、旅先の山荘にいるみたいで贅沢です。春、夏へと季節が移り変わるにつれ窓の外がどんな景色になるのか、今からとても楽しみです」(純子さん)
そして部屋には、器のみならず、国内、そしてヨーロッパやアジア各地で買い集めてきた古いオブジェやアートがところ狭しと並んでいる。二人が手がける〈organ〉や〈uguisu〉と同じように、空間全体がさながらアンティークショップのようだ。
「1点ごとに微妙に異なる作家さんの手仕事や、経年変化によって味わいを増している古いものなど、一つとして同じものがないものに囲まれていると居心地が良いんです。それは、僕たちがお店で提供したい体験とも通じていて。ナチュラルワインも1本ずつ味が違うし、寝かせるとどんどん変わっていく。料理もその日の食材によって異なるものになる。二度と同じ状況を再現することができない時間にこそ、価値があると思っています」(真さん)
訪れる人に食を中心にした豊かな時間をもたらす、温かく味のある居心地の良い店づくり。その原点は、好きなものがぎっしり詰まった家で、自然体で過ごす二人の朝の時間にあるのかもしれない。
Edit:MAGAZINE HOUSE CO.,LTD ,
Interview:Emi Fukushima , Photo:Keisuke Ono