コードネームは レストラン
オーブンレンジBALMUDA The Rangeの開発から10年。当時、このプロジェクトには「Restaurant」というコードネームが付けられていました。少し変わった名前です。開発当時、会議で繰り返し語られていたのは、ある風景でした。
オーブンレンジだったはず
「カランカラン」木製のドアを開けると響くベルの音。赤と白のチェックをあしらったクロス。案内された席につき、メニューを開けば、これから始まる食事の期待感で、ワクワクする。
そんな情景を、会議の中で熱量高く話す日々。開発していたのは、オーブンレンジだったはずです。ところが、どのような機能が必要で、操作はどう使いやすくするのか、どんな佇まいがふさわしいのか。議論を重ねるほど、開発チームの頭に自然と浮かぶようになったのは、高原のレストランの風景でした。
レストランに行く理由
私たちはレストランで、料理や味わいを堪能するのはもちろん、お店に向かう過程や、何を食べようかと真剣に悩むとき、料理を待つ時間など、食事の前後のひとときにも代えがたい高揚を覚えます。そんな、料理を温めるだけではない、使う時間そのものが楽しくなるオーブンレンジを作れないだろうか。「Restaurant」。このプロジェクトに、そんなユニークなコードネームがつけられました。
レストランの風景や楽しい記憶をどのように表現できるのか。開発チームはさまざまな可能性を探ります。
屋根?窓?灯り?
デザインチームはまず、レストランに感じる親しみや温かさの表現を試みます。
お店の屋根、格子窓、穏やかな灯り、店の周りに生えている木に至るまで。思いつく限りのレストランの外観をデザインに引用しましたが、描かれるのは、なんとも不思議なものばかり…。
ふと、私たちは我に返りました。いいキッチンに置いてあるものは、いいものであるべきだ、と。デザインチームは、レストランの素敵さは光や音で表現するアイデアに方向転換。良い道具としてのデザインを改めて模索し始めます。
最終的には、外観はむしろ端正なものに仕上がりました。象徴的なハンドルには、お店の光をイメージした3灯のライトを採用。また、温めた料理が魅力的に見えるよう庫内にも照明を設計し、おいしそうに照らす演出も加えました。
料理を楽しくするもの
BALMUDA The Rangeを象徴するギターサウンドも、この過程で生まれました。調理スタートと同時に始まるドラムのリムショット、調理が終わると流れるギター音。開発チームは、音のないレストランを想像することができませんでした。ドアを開ける音、厨房の気配、グラスが触れ合う音。人の記憶の中にある風景は、音とともに残っています。
「ジャカジャーン!」と温め完了を知らせ、スポットライトに照らされた料理を取り出す。ほんの少しのユーモアに、気分が高鳴る。この瞬間が、私たちのオーブンレンジには必要でした。
新しい豊かさ
さまざまな過程を経て最もこだわったのは「使いやすさ」です。オーブンレンジは毎日の生活に欠かせない必需品。開発チームが知る限り最もシンプルな操作系を作ろうと、複雑さをできるだけ排除し、必要な機能を迷わず、かつ直感的に使えるよう工夫を重ねました。
日々使う道具が生活の中でどうあるべきか。オーブンレンジという道具に真剣に向き合った末に、現在のBALMUDA The Rangeは誕生しました。
音や光、操作感。これらがあることで、毎日の料理や食事の時間が少しだけ豊かになります。
開発チームが最後まで考えていたのは、この道具を使った先にある、楽しさやうれしさの体験でした。高原にある、小さなレストランのように。
Written byバルミューダ ジャーナルチーム