旅する時計
私たちは、生活の道具を作りながらも、本当に届けたいのは、日常のふとした瞬間に出会う、非日常のロマンスなのかもしれません。今回お届けするのは、ある製品に込められた個人的な物語です。The Clockを作ったもう一つの理由。それは、かつて見渡す限りの世界へ飛び出した、あの日の記憶にありました。
日常と非日常
さて、あの時の決意がいまだに有効なのかどうかといわれると、疑問です。家族もいるし、会社を経営する身となった今、気軽には言えないセリフになってしまいました。しかし、「旅」という概念は、私たちにとって永遠の非日常であり、ロマンティックで、甘い響きを持っています。バルミューダは、日用品を作っています。それは、毎日使えて、暮らしの役に立つもの。しかし、だからこそ、「日常に非日常を」という価値観を大切にしています。毎日がまったく同じだったら、つまらないじゃないですか。日常にこそスパイスが必要だし、驚きたいと思います。なので、「旅」が持つ、雰囲気やロマンスが、バルミューダ製品にはたくさん散りばめられているのです。
サンフランシスコの夜
私は数年前、初めてサンフランシスコの街に行きました。とても好きな場所だなと感じました。そしてその夜、ホテルの窓から波止場を見ていたのですが、何かが足りない、と感じました。スマートフォンは手元にあるので、誰かにコールもチャットもできますが、それではないのです。音楽を流せばいいかというと、それでもない気がしました。その時書いたスケッチが、上の画像です。おそらく、スピーカーでしょう。もしくはラジオか。でも。違うんだよなあ、と思い、お蔵入りしたスケッチです。あの夜、あの物思いにふけった夜、私は何が欲しかったのでしょう。
想い人
それから数年経ち、私たちはThe Clockをつくりました。その時計は自分の時間を大切にする人のために作られたパーソナルクロックです。夜のリラックスの時間や睡眠に対しての効果を考えつつ、開発を続けていましたが、その最中、ずっとなんだか旅のことが頭の片隅にありました。旅先でも使えるものにしたいと、思っていたのです。そして出張先のホテルで試作品のThe Clockから、雨音とコオロギの鳴き声がミックスされたアンビエントサウンドを流した時。あーこれだったのかと思いました。それはまるでしばらく忘れていた「想い人」に、角を曲がってバッタリと出会ったような感覚。サンフランシスコの夜の事はもう忘れていましたが、あの夜私が欲しかったのは、旅先で感じる「深い落ち着き」だったんだとはっきりと気がつきました。
トラベルクロックなのかも
結局のところ、The Clockは私にとってトラベルクロックなのかもしれません。 なぜなら、人生は旅だから。毎日眠る前から使い、目覚める時も起こしてもらい、昼間の集中も助けてくれて、会社にも持っていって、すべての会議でアンビエントサウンドを流しています。でも、本当のところ。人生において、日々の生活と旅、一体どっちが大事なのでしょうか。これからやってくるであろう、いろいろな旅にThe Clockを持っていきたい。そして、幾つもの夜を共にしたい、と楽しみに考えています。
Written byバルミューダ ジャーナルチーム